平城京朱雀大路・二条大路(右京三条一坊一・ハ坪) 現地説明会

開催日
2016年(平成28年)6月11日(土)
調査機関
独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所 都城発掘調査部
調査地 奈良市二条大路南4丁目
調査期間 2016年3月8日〜継続中
調査面積 東区 南北18m x 東西20m=360m2
西区 南北18m x 東西18m=324m2 計684m2

概要

朱雀大路西側溝、二条大路南側溝、西一坊坊間東小路西側溝を検出しました。朱雀大路西側溝は、二条大路を横断することがあらためて確認されました。西一坊坊間東小路東側溝は想定された位置に明瞭には確認されませんでした。また、二条大路南側溝の北側に接続する南北溝をあらたに検出しました。この南北溝は二条大路南側溝に流れ込み、同時に埋められたもので、その性格については今後の検討課題となります。

1.調査の経緯と目的

国土交通省により今後進められる史跡朱雀大路跡等の整備に向けて、奈良文化財研究所では2015年からこれにともなう発掘調査を実施しています。今回の調査は、朱雀門前における朱雀大路西側溝と二条大路南側溝、ならびに西一坊坊間東小路の位置と規模を明らかにすることを目的として、東西2箇所の調査区を設定し、2016年3月8日から実施しています。

2.周辺のこれまでの調査

今回の調査地である平城京右京三条一坊一・ハ坪は、平城宮の正門である朱雀門の南西に位置します。発掘調査以前は民間の工場の敷地でした。

朱雀大路と二条大路は、これまでにも当研究所や奈良市教育委員会による調査で確認しています。

朱雀大路については、最近では2015年12月から2016年3月に、右京三条一坊一・二坪において、当研究所が調査を実施しています。これまでの調査成果によると、朱雀大路西側溝は二条大路の路面を横断する可能性が指摘されており、平城宮南面大垣付近では幅2.5m、右京三条一坊一・二坪付近で幅3.3〜5.4mであることが判明しています。

二条大路は、右京域では1981年に当研究所が平城宮南面西門(若犬養門)の調査で南北両側溝を確認しています。それによると、南側溝は幅約6.0m、深さ0.7mで、南北両側溝間の心心間距離は約36.8mです。また、1982年には平城宮南面大垣の調査で、二条大路北側溝と朱雀大路西側溝の接続地点を確認しています。

西一坊坊間東小路については、奈良県立橿原考古学研究所が2015年度に今回の調査地の南方で発掘調査をおこなっており、三条条間北小路との交差点で、西一坊坊間東小路の東西両側溝を確認しています。

3.検出した遺構

(1)東区

朱雀大路西側溝と二条大路南側溝を検出しました。なお、調査区の西側は現代のかく乱により、遺構面が大きく壊されています。

朱雀大路西側溝

調査区の中央で、南北約18mにわたり検出しました。朱雀大路と二条大路の交差点部分では、朱雀大路西側溝が二条大路を横断し、調査区中央付近で二条大路南側溝とT字形に接続しています。規模は、二条大路南側溝との接続点より南側では最大幅5.5m、深さ1.3m以上あります。素掘りの溝ですが、東岸(朱雀大路側)に杭列が検出され、護岸の痕跡と考えられます。

二条大路南側溝との接続点より北側については現在調査中です。

二条大路南側溝

調査区の西側で、東西約10mにわたり検出しました。素掘りの溝で、幅は約4.0m、深さは0.7m以上あります。

(2)西区

二条大路南側溝と西一坊坊間東小路西側溝、二条大路南側溝に接続する南北溝を検出しました。西一坊坊間東小路東側溝は想定された位置に明瞭には確認できませんでした。

二条大路南側溝

調査区の中央で、東西約18mにわたり検出しました。素掘りの溝で、後述の南北溝との接続点より東側では幅が広く、深さも深くなります。規模は、南北溝との接続点より東側では幅4.0〜4.5m、深さは1.0mあり、西側では最大幅3.5m、深さは0.7mあります。溝の中で杭を何本か検出していますが、岸沿いには位置せず、護岸施設や橋脚などの痕跡とはみられません。

西一坊坊間東小路西側溝

調査区の南西で南北約6mにわたり検出しました。素掘りの溝で、検出幅は1.6m、深さは0.5mあります。二条大路南側溝との接続点付近では西岸に沿って大量の瓦が埋土の上層から出土しました。今回の調査では三条一坊ハ坪に築地塀などの遮蔽施設の遺構は検出していませんが、瓦の出土状態から築地塀の存在が推測されます。

南北溝

調査区の北側中央で南北約8mにわたり検出した、二条大路を横断する素掘りの溝です。検出幅は3.0〜3.8m、深さは0.8mあります。埋土の状況から、二条大路南側溝に流れ込み、二条大路の廃絶時には一体的に埋められたものとみられます。

4.出土した遺物

東区・西区とも奈良時代を中心とした須恵器・土師器等の土器のほか、軒瓦を含む瓦類、木製品が出土しました。とくに西区の二条大路南側溝の埋土上層からは、多量の瓦類が出土しています。このほか二条大路南側溝からは製塩土器、転用硯、木簡(削屑)やウマの骨なども出土しています。

5.まとめ

平城宮の正門である朱雀門前の様相が明らかとなりました。

①朱雀門南西側の排水計画を解明

二条大路南側溝と朱雀大路西側溝の接続部分を確認し、朱雀大路西側溝が二条大路を横断することをあらためて確認しました。また、新たに二条大路を南北に横断する排水溝が見つかるなど、平城宮の正門である朱雀門前の排水計画について、具体的なデータを得ることができました。

②平城京右京三条一坊一坪と西一坊坊間東小路を確認

西区において、西一坊坊間東小路西側溝を検出しました。二条大路南側溝との接続点付近では西岸に沿って埋土の上層に大量の瓦が出土しており、右京三条一坊ハ坪を遮蔽する築地塀の存在が推測されます。

③朱雀門前の条坊道路の敷設計画を解明

以上の成果と、これまで奈文研や奈良市がおこなってきた朱雀大路東側溝、平城京左京三条一坊一坪の発掘調査成果と合わせ、朱雀門前の条坊道路や側溝の配置は、朱雀大路を中心に東西対称に計画されていることを、具体的に確認することができました。

図1 調査地の位置と三条一坊の構造
図2 第566次調査位置図 1:800
図3 第566次遺構図 西区
図3 第566次遺構図 東区

発掘現場写真

OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影

出土遺物

OLYMPUS E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZで撮影

主催者説明ビデオ

西区の説明

東区の説明

iPhone 6sで撮影